馬田隆明さん著『成功する起業家は場所を選ぶ』(日経BP)を読了したので、特に面白かった部分、役に立ちそうだと思った部分に関して、忘備録の意味も込めてレビューします。
成功するためには、周りの環境をまず変える
マッキンゼーで経営コンサルタントをしていた大前研一さんが言うように、自分を変える方法は三つあり、
・時間配分を変える
・住む場所を変える(=自分の居場所を選ぶ)
・付き合う人を変える
これらがあげられます。
また、「あなたはあなたの周りにいる最も近しい人5人の平均だ」という言葉もあるくらいです。
著者によると、成功した起業家にインタビューすると、
「違う環境に飛び込んでみたことが良かった」
「旅をすることで様々な課題に気づくことができた」
と答える人が多いようです。
このような事実を踏まえて著者は、
自ら機会(環境)を作り出し、機会(環境)によって自らを変えよ
と唱えます。
具体的には、
Placeどこでやるか
People誰と繋がるか
Practiceどう訓練するか
Process どう仕組みを作るか
を整えるのが大切です。
これは言い換えれば、
もし起業して成功したいのであれば、最適な場所placeと人peopleを選び、正しく訓練practice しながらその実践プロセスprocessも整備する
と言うことになります。
人peopleを変える
例えば、人peopleで言えば、一つとして良い壁打ちができる相手(メンター)を身近におくことが重要です。
具体的には、
・半年先輩の起業家
・1、2年先輩の起業家
・5、6年年先輩の起業家
・10年年先輩の起業家
を捕まえて、メンターのポートフォリオを作ることが重要だそうです。
また、同じレベルの起業家(ピアメンター)と、お互いの経験や知識を教えあう「相互教授法」も有効です。
さらに、著書の中では、クリエイティブなコミュニティを作る方法として、
・一流の教師(すでに成功しているメンターのような人)
・相補的パートナー(自分の足りない部分を補ってくれる共同創業者)
・創作の女神(刺激し合えるライバル)
・卓越したプロモーター(自分のことをプロモートしてくれる人、例えば有名人)
をチームの中に入れると良いそうです。(p.317)
また、いつでも人に頼る・人に頼む環境が周りにある人は、そうでない人に比べて成長しやすいと言う研究結果もあるそうです。
これは、受験勉強や習い事一つとってみても、わかりやすいですね。
起業では、豊富なビジネス経験とそれゆえ築かれる人脈が成否を左右します。
場所placeを変える
居場所を変えることで新しい人脈を得て、人生を変えることができます。
例えば、起業で成功したかったり、起業家になる心理的ハードルを下げるためには、
起業家の多くいる環境に身をおくことが重要です。
変化は他人の間に入った時に起こります。
起業で成功したければ、起業家が集まる場所に住みましょう。
東京でいえば、渋谷、五反田、本郷三丁目です。
自分が有名大学や有名起業出身の場合はそのコミュニティーを活かすのも有効です。
ネットワークは積極的に活用していきましょう。
幅広い情報を得るために、一つではなく、複数のコミュニティーに所属することの大切さについても述べられていました。
人が集まりやすい環境を自分で作るのも有効です。
例えば、仲間数人でお金を出し合って小さなオフィスを借り上げ、多くの人が出入り可能な場所(マージナルプレイス)を作るのも有効で、実際にそうして共同創業者を見つけた例も紹介されていました。
ゼロから新しい場所を作る際は、関心に基づくコミュニティではなく、あるテーマに関連した実践コミュニティを意識することが大切だそうです。
場所を選ぶ際は、自分の強みが活かせる環境を選ぶことも心がけましょう。
良い訓練practiceの作り方
ここでは良いアイデアの出し方が印象的でした。
良いアイデアは、発散と収束を「繰り返す」ことで生まれます。
発散
発散とは、大量にインプットとして大量にアウトプットすることを言います。
インプットでは、自分の専門の周辺分野も含めて幅広くインプットすることが大切です。
こうすることで、どの業界が成長しているのか、チャンスを得ることができるかもしれません。
発散では、深化(一つのことを深く調べること)と探索(ジャンルを広げて広く調べること)が大切です。
特に、過去の似たアイデアを構造的にまとめてサーベイしたり、、過去の取り組みと自分たちの取り組みがなにが違うのか説明できるようにすることがポイントです。
アウトプットの際には、初めから完璧なものを求めず、生焼けのアイデアでも良いので、Google spread seatにとにかく記録していくやり方が紹介されています。
課題単体や解決策単体でもとにかくメモに残しておきましょう。
それらを公開して、反応が良かったものを掘り下げる方法も有効みたいです。
そして、物を作り始める時は、雑でもいいのでとにかく作ることが重要です。
とにかく実践 まずは3回はやってみることが大切です。
その際、小さな締め切りをたくさん作って、生産効率を上げましょう。
また、自分たちのチームに技術力がない場合、
とにかく自分たちで学ぶか、作るもののレベルを落として作れるものから作る
の二つの方法が挙げられ、
熟達した起業家は、自分が今持っている手段で何かを作る
ことができます。
手を動かしていれば、自然と協力者が見つかっていきます。
今では、ネットでさまざまなツールが発達しているので、コードが書けなくても、ツールをうまく活用することで、ある程度のサービスは実装可能です。
収束
収束は、発散したアイデアを結晶化(まとめ上げること)することをいいます。
ここでは、初めから大人数向けに公開するのではなく、少人数に参加してもらって改善していく方法が印象的でした。
また、挑戦する際、「バーベル戦略」が有効です。これは、
確実に当たりやすいアイデアにそれなりの資源を振り分ける一方、成功確率は低いけれどすごく大きくなりそうなアイデアに少数の資源を振り分けておく
方法です。著者曰く、
起業を成功されるには運が必要で、運=挑戦回数×挑戦速度
で決まるので、
時間の9割は安全で堅実なキャリアに賭けつつ、残り1割を積極的によいブラックスワンに賭ける
にかけるのが、成功する起業家の特徴です。
これはとても勇気づけられる言葉だなと感じました。
その他
その他、印象的だったことを列挙します。
・「ハミングの大いなる考察の時間」
→例えば金曜午後を絶対に予定を入れず丸々空けておくなど、意識的にインプット時間を作るのが大切
・とにかくアイデアをたくさん出す。その際、satisfice(最高を求めるのではなく、最低基準を満たすかどうか)の概念を取り入れることが重要
・バイアスを避けて正しい戦略や方法論を取る方法として、「WRAPプロセス」(p158)
・よく考えられた練習(p103)、チェックリストを作る
・アクションの起こし方「BMLループ」(p209)
計画の立て方「LMBループ」
・経験学習の循環モデル(p211)
・エフェクチュえエーション(p213)
・affordable loss(許容可能な損失)で可能な限り実験すること
・仮説検証していくことがとにかく大切
・類似のアイデアを検索する
・ユニコーン起業家には連続起業家が多い
→ユニコーン起業家になりたいなら、まずはexitを目指す?
・企業が成長できるかはタイミングの要素が大きい
・組織に女性デザイナーがいると創造性が増す
・大企業と組んで、既存の大企業と組んでデータを収集する基盤を作る 工場を借りて量産体制を作る
・強制的にリフレクションの機会を作るためにコーチングを受ける
・予測力の高い人の特徴として、
・問題を分割すること
・新しい情報を得て、意見を変えること
・どんな問題でも対立する見解を考えること
・失敗した時には原因を検証すること
・仲間を使うためのチームマネジメント能力を身につけること
・アイデアのチェック方法→6つのS
・時間を有効活用するプロセス
マルチタスクは効率が悪い。今やるべきタスクの量が制限されているという環境を作る
→毎朝3つだけ今日終わらせることを決めて、それら以外はやらないようにする